いまどきエンジニアの育て方(15)
市場のニーズを知れば、設計の意義が見えてくる
開 発の後工程が製造ならば、前工程はマーケティングや企画 に当たります。若手の育成というとどうしても技術に偏りがちですが、新人のころから市場や顧客を知る機会を与えるのはとても大切です。仕様書通りに設計す るだけよりも、市場の動きや顧客のニーズを知った上で設計した方が、若手にとっても面白くやりがいのある仕事になるはずです。
[世古雅人,カレンコンサルティング]
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初めて設計したCPUボードがうまく動作せずに悩んでいた佐々木さん。声をかけてくれた田中課長があっという間に動作不良の原因を突き止める姿を 目の当たりにします。田中課長に「こうだろ?」と教わりながら、波形の変化を観測して原因を絞り込んでいくことも、佐々木さんにとっては初めての経験でし た。また、この原因を絞り込む過程において、佐々木さんは、開発部門だけでは製品ができないこと、後工程である製造部をはじめ、部門間の連携が大事であることを学びます。
さりげなく気付かせる
これまで長谷川リーダーから満足にOJT(On the Job Training)を受けたことがなく、「設計し、図面を書くことが開発の仕事」だと思っていた佐々木さんです。田中課長の経験と勘を生かした問題解決の アプローチと、部門の連携が大事だということは、佐々木さんにとって、とても新鮮に映りました。「入社して1年、誰も教えてくれなかったことを田中課長は自分に気付かせてくれた」――。この体験を通じて、佐々木さんの心の中に「課長のようなエンジニアになりたい」と、ぼんやりではあるものの“エンジニアの理想像”が見えてきたようです。
佐々木さんには視野の広いエンジニアになってほしいと願う田中課長ですが、佐々木さん自身の気持ちの変化には、ほとんど気づいていない様子です。 技術のことを手取り足取り教えるよりも、実際の製品を教材にしながら、考える道筋や解決のロジック、開発部だけでは製品ができないことを示す――。田中課 長は無意識のうちに行っていましたが、この“さり気なく気付かせること”が、本人(佐々木さん)にとっては最も効果的なのです。
マーケティング部門の製品コンセプト会議に若手を!
場面は変わり、田中課長はマーケティング部の松田課長と、この一件(田中課長自らが手を動かし、後工程の大切さを伝えたこと)について話をしています。
ほう、佐々木さんにそんなことがあったんですね!
つい、自分もあれこれ口を挟んでしまったよ。エンジニアのさがかなあ。
佐々木さんにとってはいい勉強になったのではないでしょうか?
だといいんだが……。1つ相談だけど、今度は前工程に関わる仕事を彼に伝えたいんだよ。
と言いますと?